江戸ガラス5 精煮(ほんに)

いよいよ最終日。
再度細かくしたガラス粉を熔融して(精煮)
無事ガラスを吹くことができるのでしょうか。

精煮をするために再度、冷ました熔融窯の温度を上げることは、
リスクがあります。
というのも、高温でガラスを溶かしたガラス壺は、
一度冷ましてしまうと壺の成分が脆くなってしまうため、
再度温度をあげると、壺に亀裂が入ったり
割れてガラスが漏れだしてしまう可能性があるからです。
過去に、実際に壺が割れてしまった事があるそうです。

なので、慎重に窯の温度を上げて、
木炭が壺の底に当たらないように
注意しながら投入していきます。

江戸ガラスの精煮

段階は粗煮の時と同じで、少しずつガラスの粉を投入していきます。
全部入れ終わったら、すべてが煮えるまで、少し時間を置きます。

江戸ガラスの精煮

木炭を地道に窯に入れ続ける温度管理は身体がほてり、
なにげに体力を消耗します。
お昼休み、すっかり眠りこんでしまいました。

「ツボニアナガアイタ~」

なにやら聞こえたような、、、

「壺に穴があいた~~!!」

あ゛ぁ?!

幸い、ガラス壺に空いた穴は極小だったらしいのですが、
何がおこるか分かりません。
ガラスが漏れてしまう前に、とっとと使いきらなくてはなりません。
急いで成形作業に入る事になりました。

まずはこの道64年、御年81歳の職人さんが
見本をみせてくれます。
過去には1日2000個の電球を吹いたという伝説があります。

江戸ガラスの精煮

ガラスはものすごく柔らかそうですが、さすが職人さん、
素材の質が変わってもものともせず、
何事もないように美しい盃を作り上げました。

実際吹いてみると、とてもさらっさらしていて
なんだか水のよう、、冷めるのも早くクセがあります。
ここまでくるための長かった行程を思い浮かべると
無駄にはできないと、ついつい力が入ってしまいます。
いとおしさまで感じます、、
涙がでそう、、、

小さな壺なので、実際に出来たガラスの量も多くなく、
10人でひとつづつ、小さい盃とおはじきをつくり、
ガラスはほぼ無くなりました。

江戸ガラスの精煮
江戸ガラスの精煮

空いた穴も小さかったようで、無事全員が成形することができました。
作ったガラスは一晩、徐冷炉という冷ます為の窯に入れて、
一晩かけてゆっくり冷まします。

一晩明けて、出来た盃です。

江戸ガラスの精煮

透明度あり、若干黄緑がかってますが、この煌めき、ガラスそのものです。
鉛が入っているので使用することはできませんが
無事完成することができました!


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